ベイパーチャンバーとは?
ベイパーチャンバーとは、ヒートシンクやグラファイトシートよりも優れた熱移動性能を持つ放熱装置のことです。毎年、性能が上がっているスマートフォンですが、高性能になると消費電力が増え、熱を多く発生するようになりました。半導体機器にとって、熱を持つことは性能の低下や内部の破損といった問題を引き起こすため、処理能力の向上と熱対策は切っても切れない関係にあります。
スマートフォンの熱対策には、ヒートシンクやグラファイトシートがよく使われますが、熱を発生しやすいハイエンドスマートフォンにはベイパーチャンバーが使われることがあります。例えば、ゲーム性能に特化した高い性能を持つASUSの「ROG Phone 7」シリーズやサムスンのハイエンドスマートフォン「Galaxy S」シリーズなどに搭載されています。
ベイパーチャンバーの仕組み
一見、ただの薄い金属板のような見た目をしているベイパーチャンバーですが、中には冷却液が入っており、この冷却水がスマートフォン内の熱くなった部品を冷まします。部品を冷ました冷却水は熱くなり気化しベイパーチャンバー内を対流します。対流して熱を拡散し蒸気は冷めて、また冷却水に戻り、部品を冷やすため毛細管を通じて熱源に戻ります。これを繰り返すことでスマートフォン内部の熱を放熱しています。デスクトップPCのCPU冷却装置に使われる水冷式に似ていますね。
放熱性が高く、薄い形状を持つベイパーチャンバーはスマートフォンの冷却装置にぴったりですが、薄くて頑丈なベイパーチャンバーを作るにはそれなりの技術とコストが必要になります。
今後のベイパーチャンバーの普及
現在では、還流水路を増やして冷却水の流れを速くすることで冷却性能を高めたり、エッチング加工を用いてより薄くするなど改良が進んでいます。こうした改良はスマートフォンの高性能化や薄型化に繋がりますが、他にも、スマートグラスのような次世代ウェアラブル端末への実現にも繋がっていくでしょう。