PCには、CPUやメモリ、GPUなど、いろいろパーツがありますが、PCを動かすのに欠かせないパーツとしてVRMというのもあります。自作PCを組まない人にとっては、あまり耳にしない言葉ですが、重要なパーツなので紹介したいと思います。
VRMとはどういったパーツか?
VRM(Voltage Regulator Module)とは電源からCPUに流れる電力の電圧を下げたり、CPUに電圧を一定に送るための部品です。電源から電源コネクタを通じてマザーボードに流れる電力は大体、数V~十何Vですが、CPUが扱う電力はおよそ1.5V以下です。そのため、CPUソケットの周りには電圧を下げるためのVRMが設置されています。
マザーボードの価格によってVRMも変わる
すべてのVRMが同じよな性能を発揮するとは限りません。VRMに高価なパーツを使えば、VRM自体の変換効率が上がり、発熱が低くなります。安いパーツでVRMを作れば、変換効率はその分だけ悪くなるので、発熱が多くなります。発熱して温度が上がったVRMは十分な機能を発揮できなくなり、CUPに送れる電力が少なくなります。十分な電力が伝わらないCPUは性能を発揮できず、PC全体の性能が落ちてしまいます。そのため、あまり聞きなれないVRMですが、意外と重要な部品と言えます。
自作PCを組み立てるときに、いろいろパーツを買いますが、VRMはすでにマザーボードについているため、購入するマザーボードでVRMの性能は決まってしまいます。当然、高いマザーボードには高いパーツが使われるため、お金を出せば、それなりのVRMが付いてきます。
安いマザーボードでだと、まったく動かないというわけではありません。負荷の少ないワークロードなら安くてもちゃんと動いてくれます。(例えば、事務作業などのオフィスソフトやネットサーフィンなど)。しかし、動画編集や負荷の高いゲームソフトなどはVRMの温度が高くなりやすいです。
一度、マザーボードを買ってしまうと後から取り替えたり、買い直したりするのは面倒なので、自分がどういった使い方をするか明確にしたうえで、マザーボードのレビューなどを見て、買う製品を判断すると良いと思います。
ハイエンドなモデルはフェーズ数が多い
VRMのもう一つの機能である、電圧を一定に送る機能はスイッチングレギュレータと呼ばれる回路を使っています。スイッチングレギュレータとはスイッチング素子(トランジスタなど)を高速でON/OFFすることで直流電圧を出力する電子回路のことです。
そして、多くのマザーボードには、複数のスイッチング回路を組み合わせたマルチフェーズ回路がVRMに用いられています。フェーズ数が多いということは、このスイッチング回路が多いということになります。マルチフェーズ回路は、アイドル時と高負荷時で電流が変化するCPUに対して、効率的に電力を出力することができます。
フェーズ数が多くなると、1回路当たりの出力を小さくしつつ、回路全体で大きな出力に対応できます。コア数の多いハイエンドCPUなどは、クロック数が上がると、大出力を必要とするため、コア数が多いハイエンドCPUにはフェーズ数が多いハイエンドマザーボードが求められます。
デメリットとして、マルチフェーズ回路は複雑な制御や回路を必要とします。そして、フェーズ数が増えるとその分だけVRMにかかる費用が増えます。
5つの構成部品
VRMは主にこの5つのパーツで構成されています。
- PWMコントローラ
- MOSFET
- コイル
- ドライバIC
- コンデンサ
PWMコントローラ
PWMコントローラは、パルス幅変調(PWM)制御を行うための電子回路です。PWM制御は、スイッチング素子のON/OFF時間(パルス幅)を変化させることで、出力電圧や電流を制御する方法です。
MOSFET
MOSFETとは、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ (Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor) の略称です。電界効果トランジスタ (FET) の一種で、LSIの中では最も一般的に使用されている構造です。
ゲートに電圧を印加すると、チャネルに電荷が誘起され、ソースとドレイン間の電流が流れます。ゲート電圧によって電流の量を制御することができます。
コイル
VRMにおけるコイルは、スイッチング素子のON/OFFによって生じる電流の脈流を平滑化し、出力電圧のリップルの低減やエネルギーの貯蔵、ノイズの低減により出力電圧を安定させる役割を果たしています。
ドライバIC
VRMにおけるドライバICには、スイッチング素子の適切なタイミングによるゲート駆動や過電流保護、過熱保護による保護機能、スイッチング素子の損失の低減による効率向上といった役割があります。
コンデンサ
スイッチング素子のON/OFFによって生じる電圧の脈流を平滑化します。
まとめ
VRMには主に二つの役割があります。電源からCPUに流れる電力の電圧を下げることと、CPUに電圧を一定に送ることです。VRMの性能はパソコン全体の性能に大きくかかわることがあるので、マザーボードを購入する際は、フェーズ数や品質を確認して購入しましょう。
以上、VRMについての解説でした。